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プール
八坂真希は、屈辱で涙が出そうだった。本来からプライドが高く、自信を持っている。二児を設け、女としても母としても幸せを得ていた。そんな時、いきつけのフィットネスクラブに突如現れた謎の女。艶かしい身体を持った女だった。トレーニングルームに入った瞬間に目に入った。男の視線を引いて満足そうにしてるのが目に見えて分かった。そして、なによりもプライドが高そうで・・・だからこそ、隣のランニングマシンを使い、あてつけるように走ってやったつもりだった。たいてい女は、真希の前では、ただの凡人となる。しかし、その女は対抗するように、隣で走りだした。負けん気の強い真希は負かしてやろうと思った。勝負を挑んだことを後悔させてやろうと。しかし・・・先に音を上げたのは真希の方だった。見下ろしたあの女の顔が忘れられない。小馬鹿にしたような笑い顔・・・果たして自分はどんな顔だったのか・・・。悔しさを思い出していたとき、そっきの女が、プールに向かっているのが見えた。躊躇することはない。リベンジマッチだ。
競泳水着となった真希。ムチッとしたボディに長い手足。ハイレグに押し込めたハリのあるお尻。競泳水着に押し込むのには不自然な大きな胸。全てが完璧だった。自分に自身があるのも当然だ。しかし・・・。
(似ている・・・。でも、私のほうが勝っているはずよ!)
例の女も、競泳水着の姿だったが、見れば見るほど完璧だった。欠点らしいものを探すが見つかりそうにない。その上、ランニングマシンの勝負では、真希に勝っており、劣等心が芽生えつつあった。
(ふざけないでよ・・・今まで私が完璧だったの!こんなとこで負けたまま終われるわけない・・・)
ザブン
不安を打ち消すように、女の隣のレーンに真希は入り込んだ。
あとは、さっきのランニングマシンと同じだ。勝負をしかけた真希に対して、隣の女も確かに対抗してきた。ついてくるだけではなく、たまに前に出て折り返し、真希を振り切ろうとしてくる。しかし、もう真希も負けるわけにはいかない。真希もどんどんとスピードを上げて泳ぐ。あとは根比べの勝負。隣から先に消えた方が負けだ。
しばらくたった。もう数キロは泳いだろうか。最初の勢いは消え、どちらも死にかけの魚のようだった。それでも泳ぐのをやめようとしない。真希もそろそろ厳しい状況だ。
(つらい・・・足をつきたい・・・でも・・・もう負けたくない!)
最後の力を振り絞り、真希はスピードを上げた。
(これで、離せないなら、もう勝てない・・・もう。。。限界・・・)
最後の力を振り絞った真希は、端まで泳ぎきり、手をついたところで両足をついてしまった。
(あ・・・また、負け・・・)
そう思った。もうプライドが全て崩壊してしましそうなほど。しかし、
(あれ・・・?)
隣のレーンを見るとそこには誰もいなかったのだった。
少し目線を後ろに向けると、女はそこに立っていた。
女は、鬼のような形相をしていた。そして歪んだ口と、鋭い目には悔しさが滲んでいた。
ゾクリっ!
真希は震えた。
(勝った!あの顔・・・私の勝ちだ。完璧に・・・)
一度勝った女にリベンジされるのはどんな気持ちだろうか。普通に負けるより悔しいに違いない。真希の顔は女を見下し、ニヤケ面が顔には張り付いていた。そうして、満足感を胸に、プールを後にした。